夫の海外赴任が決まり、家族で渡航することになったとき、多くの方が抱えるのが「自分のキャリアはどうなるのだろう」という不安ではないでしょうか。
それまで積み上げてきたキャリアを一時中断することへの戸惑い、専業主婦になることへの違和感、帰国後に再就職できるかという心配…わたしも不安で仕方がありませんでした。
かれんこの先の仕事どうしよう…
実際に、駐在妻を対象とした調査では、約7割の方が「キャリア中断への不安」を感じているというデータもあります。
仕事を通じて得られていた達成感や社会とのつながりが突然失われることで、アイデンティティの喪失感を覚える方も少なくないのです。
しかし、視点を変えれば、駐在期間は自分自身と向き合い、新しい可能性を見つけるチャンスでもあります。
この記事では、キャリア中断への不安とどう向き合い、駐在生活を自分らしく充実させるためのヒントをご紹介します。
1.まずは不安な気持ちを認めてあげる
キャリアを中断することに対して、不安や焦りを感じますよね。
わたしもその1人だったのでお気持ちとても分かります。
「夫の仕事のサポートをするのだから、自分のことは我慢しなければ」と自分の気持ちに蓋をしてしまう方もいらっしゃいますが、まずはその感情を認めてあげることが大切ではないでしょうか。
不安を感じている自分を責める必要はありません。むしろ、それはあなたがこれまで仕事に真剣に取り組んできた証であり、キャリアを大切に思っている証拠です。
日記に書き出してみたり、信頼できる友人や家族に話してみたりすることで、気持ちが整理されることも多いものです。
また、駐在前にキャリアカウンセラーやコーチングを受けてみるのも一つの方法です。第三者の視点から自分のキャリアを客観的に見つめ直すことで、今後の方向性が見えてくることもあります。渡航前の忙しい時期ではありますが、自分の気持ちと向き合う時間を持つことは、その後の駐在生活を前向きに過ごすための大切な準備と言えるでしょう。
2.「キャリアの中断」ではなく「キャリアの多様化」と捉える
駐在期間を「キャリアの空白期間」と捉えると、焦りや不安が募ってしまいます。しかし、発想を転換して「キャリアの多様化期間」と考えてみてはいかがでしょうか。
海外での生活は、日本では得られない貴重な経験の宝庫です。異文化の中で生活し、現地の人々と交流し、子どもの教育を多言語環境でサポートする。これらはすべて、グローバル人材として高く評価されるスキルや経験につながります。実際に、帰国後の再就職面接で「駐在期間中の経験」が評価され、採用につながったという事例は数多く報告されています。
また、駐在中に新しい資格を取得したり、オンラインで学び直したりする方も増えています。時差や子どもの学校スケジュールとの兼ね合いで工夫は必要ですが、オンライン学習の発展により、世界中どこからでも質の高い教育を受けられる時代になりました。MBAやプログラミング、デザイン、語学など、自分の興味のある分野を深める絶好の機会と捉えることもできるのです。
3.小さな「自分プロジェクト」を持つ
駐在生活では、家事や育児、夫のサポートで一日が終わってしまい、「自分のために使った時間がゼロだった」という日が続くこともあります。そんな中で大切なのが、小さくても「自分のプロジェクト」を持つことです。
プロジェクトと言っても、大げさなものである必要はありません。例えば、以下のような例があります。
現地の料理を月に一つずつマスターし、レシピブログで発信する
週に一度、現地のカフェで読書や勉強の時間を確保する
駐在先の文化や歴史について調べ、家族旅行の計画を立てる
オンラインで日本語教師の資格を取得し、現地の日本語学習者に教える
写真やイラストなどの趣味を深め、SNSで作品を発表する
実際に、駐在中にブログやSNSで情報発信を始め、それが帰国後のキャリアにつながったという方も少なくありません。ある駐在妻の方は、現地の子育て情報をブログで発信し続けた結果、帰国後にライターとして活躍されています。また別の方は、現地で学んだ料理の知識を活かし、料理教室を開業されたそうです。
重要なのは、「自分のために時間を使うことは贅沢ではない」という認識を持つことです。自分のプロジェクトに取り組む時間は、心の充実につながり、結果的に家族との関係や駐在生活全体の質を高めることにもつながります。
4. 現地でのネットワークを積極的に築く
駐在生活で孤独を感じる方は多いものです。言葉の壁、文化の違い、知り合いがいない環境。こうした状況下では、意識的にネットワークを築いていくことが重要になります。
まずは、日本人コミュニティへの参加から始めてみるのはいかがでしょうか。多くの都市には日本人会や駐在妻の会があり、同じ境遇の方々と情報交換ができます。そこで得られる生活情報だけでなく、「自分だけではない」という安心感も大きな支えになるでしょう。
さらに一歩進んで、現地のコミュニティにも参加してみることをお勧めします。語学学校、ボランティア活動、習い事、子どもの学校のPTA活動など、入り口はさまざまです。最初は勇気がいるかもしれませんが、現地の人々との交流は、その国の文化をより深く理解する機会となり、駐在生活をより豊かなものにしてくれます。
また、オンラインでのネットワークも活用しましょう。同じ国に駐在している日本人のSNSグループや、キャリアを持つ駐在妻のコミュニティなど、物理的な距離を超えてつながることができます。こうしたつながりから、新しいビジネスのアイデアが生まれたり、帰国後も続く友人関係が築けたりすることもあります。
5. 帰国後を見据えた準備を少しずつ始める
駐在期間には必ず終わりが来ます。帰国後のキャリア再開に向けて、駐在中から少しずつ準備をしておくことで、不安を軽減することができます。
まず、日本の業界動向や転職市場の情報は定期的にチェックしておきましょう。オンラインで読める業界誌やニュースサイト、LinkedInなどのビジネスSNSを活用すれば、海外にいながらでも情報は入手できます。また、元の職場や業界の知人とは、メールやSNSでゆるやかにつながっておくことも大切です。
帰国の半年から1年前になったら、転職エージェントに相談を始めるのも良いでしょう。最近では、海外在住者向けのオンライン面談を行っているエージェントも増えています。駐在経験を持つ人材を積極的に求めている企業も多く、思っているよりもキャリアの選択肢は広いかもしれません。
また、駐在中の経験を「職務経歴書に書ける形」で整理しておくことも重要です。例えば、「子どもを現地校に適応させるために、週3回学校でボランティア活動を行い、保護者と教員の橋渡し役を担った」といった経験は、「異文化コミュニケーション能力」「問題解決能力」「リーダーシップ」として評価される可能性があります。日々の経験を記録しておくことで、帰国後のキャリア再開時に自信を持って自己PRができるでしょう。
おわりに:駐在生活は「人生の投資期間」
駐在生活は、確かにキャリアの面では一時的な中断かもしれません。しかし、長い人生という視点で見たとき、この期間は決して無駄な時間ではなく、むしろ「人生への投資期間」と言えるのではないでしょうか。
新しい文化に触れ、多様な価値観を学び、自分自身と向き合う時間を持つ。これらの経験は、あなたの人間としての深みを増し、将来のキャリアにも必ずプラスになるはずです。帰国後に「駐在期間があったからこそ、今の自分がある」と思える日が来ることを信じて、今できることを一つずつ積み重ねていきましょう。
不安を感じるのは当然です。でも、その不安と上手に付き合いながら、駐在生活を自分らしく楽しむことができたなら、それは何よりの成功体験となるでしょう。あなたの駐在生活が、充実したものになることを心から願っています。

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